旅館スタッフの仕事内容、旅館に就職する方法

旅館業界での就職を考えている方にとって、どのような仕事があるのかや仕事の大変なこと、業界の動向等について理解することはとても大切です。本記事では、旅館業界の仕事内容や年収、大変なところ、業界の動向など就職に関する情報を提供し、あなたのキャリア選択をサポートします。

記事の目的
旅館業界のこと、就職方法について知る

旅館スタッフの仕事内容

まずは、旅館業界のことを詳しく知っていきましょう。第一章では旅館の職種について軽く紹介しましょう。旅館での仕事を大まかに分けると、接客業務、裏方業務、管理業務の3つに分類できます。

1. 接客業務

接客業務は、宿泊客と接する仕事です。以下のような職種があります。

  • フロントスタッフ:チェックイン・チェックアウトの手続きや、宿泊客からの問い合わせ対応を行います。
  • 客室案内係:客室への案内や、館内施設の説明などを担当します。
  • レストランスタッフ:館内レストランでの接客を担当し、料理や飲み物の提供を行います。

2. 裏方業務

裏方業務は、宿泊客とは接しないものの、旅館運営には欠かせない仕事です。

  • 清掃スタッフ:客室や共有スペースの清掃を担当します。
  • 調理スタッフ:旅館内の食事を準備する仕事で、和食や洋食などの料理を提供します。
  • 施設管理スタッフ:設備の点検や修理を行い、安全で快適な環境を維持します。

3. 管理業務

管理業務は、旅館全体の運営をサポートする重要な仕事です。

  • マネージャー:スタッフの管理やシフト調整、顧客対応など、旅館の運営全般を指揮します。
  • マーケティング担当:宿泊プランの企画や、広告宣伝を行い、集客を図ります。

旅館業界の年収について

旅館業界での年収は、どの程度なのでしょうか。収入は職種や勤務地、経験年数によって大きく異なりますが、一般的な職種別の年収を紹介します。

1. 旅館スタッフ全体

旅館スタッフ全体としての平均給料です。(参考:求人ボックス旅館の年収・時給)

初任給:月20万
平均年収:348万円

2. フロントスタッフ

フロントスタッフは、チェックイン・チェックアウトの手続きや宿泊客の問い合わせ対応を行います。この職種の年収は、以下のようになります。(参考:求人ボックスホテルフロントの年収・時給)

初任給:月20万円
平均年収:338万円

3. 調理スタッフ

調理スタッフは、旅館内の食事を準備する仕事で、和食や洋食などの料理を提供します。この職種の年収は、以下のようになります。(参考:求人ボックス調理スタッフの年収・時給)

初任給:月22万
平均年収:375万円

4. マーケティング担当

マーケティング担当は、宿泊プランの企画や広告宣伝を行い、集客を図ります。この職種の年収は、以下のようになります。(参考:求人ボックスマーケティングの年収・時給)

初任給:月22万
平均年収:461万円

地域差について

旅館業界の年収は、地域によっても異なります。都市部や観光地にある旅館では比較的高めの年収が期待できる一方、地方の旅館ではやや低めになる傾向があります。また、大規模な旅館や高級旅館では年収が高くなることが多いです。

旅館で働くのはきつい?働くときの大変なこと

旅館で働くことは大変なのでしょうか。よく懸念される3点はこちらです。

1. 長時間労働

旅館は24時間営業のため、勤務時間が不規則になりがちです。特に、繁忙期には長時間労働が求められることがあります。

  • 早朝や深夜の勤務:早朝や深夜のシフトがあるため、生活リズムが崩れやすいです。
  • 残業:チェックインやチェックアウトの時間に合わせて残業が発生することがあります。
  • 休日の少なさ:観光シーズンや連休中は休みが取りにくく、連続して働くことも多いです。

2. 接客のストレス

旅館業界では、宿泊客とのコミュニケーションが重要です。そのため、接客に関するストレスが避けられません。

  • クレーム対応:時には不満を持つお客様からのクレーム対応が求められます。これには高いストレス耐性が必要です。
  • 多様な顧客対応:さまざまな国籍や文化背景を持つお客様に対応するため、柔軟な対応力が求められます。

3. 体力的な負担

旅館での仕事は、体力的な負担が大きいときもあります。

  • 清掃業務:客室や共有スペースの清掃は肉体労働であり、特に大型旅館では多くの部屋を担当するため、疲労が溜まりやすいです。
  • 重い荷物の運搬:お客様の荷物を運ぶ際や、物品の補充、料理の提供などで重いものを持つことがあります。

旅館で働く魅力

旅館で働くことの魅力を紹介します。

職種ごとの一流技術が身につく

旅館にはフロントスタッフや仲居、板前など様々な職種が存在します。旅館では働くと、他の業界では身に着けることが難しい一流の技術を身に着けることができます。例を挙げると、接客業では、旅館の仲居やフロントスタッフの接客技術は頭一つ抜けており、身に着いた接客技術や対応力、観察力などは転職後に高く評価される傾向にあります。旅館で働くということは、それぞれの職種の専門技術を身に着け、手に職をつけることができるという意味で大きな魅力があります。

充実した福利厚生

旅館では勤務中に食事が提供されたり、勤務前後に温泉を無料で使えることが多いです。また、複数の旅館を経営するグループ旅館の場合、系列施設に宿泊する際の社割制度が充実している場合が多く、充実した福利厚生が魅力的です。また、地方の温泉旅館などでは寮が完備されている場合があり、遠方から就職する場合も安心して働くことができます。

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旅館で働くときに必要なスキル

旅館で働くにあたってどのような能力が必要なのでしょうか。

1.接客スキル

 旅館では、お客様とのコミュニケーションが中心となるため、優れた接客スキルが必要です。

  • 丁寧な対応:お客様に対して常に礼儀正しく、親切で丁寧な対応を心がける
    (例)お客様が疲れて到着した際に、迅速かつスムーズにチェックイン手続きを行い、リラックスできるよう配慮する
  • ホスピタリティ精神:お客様のニーズを理解し、それを超えるサービスを提供する姿勢
    (例)お客様が特別なリクエストをした際に、期待を上回るサービスを提供する

2.コミュニケーション能力

スタッフ間やお客様とのスムーズなやり取りには、高いコミュニケーション能力が不可欠です。

  • 言語能力:特に外国人観光客が多い地域では、英語やその他の外国語が役立つ
    (例)海外からのお客様に対して、的確に情報を提供したり、要望を理解する
  • 対話力:相手の話をよく聞き、適切に応答する対話力
    (例)お客様が困っている時に、丁寧に話を聞き、適切なサポートを提供する

3.マルチタスク能力

旅館では、同時に複数の業務をこなすことが多いため、マルチタスク能力が重要です。

  • 優先順位の設定:急な対応が必要な場合でも、業務の優先順位を適切に設定する
    (例)チェックイン対応中に緊急の客室清掃が必要になった際に、効率よく作業を進める
  • 柔軟性:予期しない事態に迅速に対応し、適応する
    (例)予期せぬ天候変化で予定が変更になった際に、迅速に対応策を考える

4.問題解決能力

お客様からのクレームやトラブルに対して迅速に対応するための問題解決能力が求められます。

  • 冷静な対応:トラブルが発生した際に冷静に対応し、最適な解決策を見つける
    (例)予約のダブルブッキングが発生した場合に、迅速かつ冷静に対応策を考える
  • 創造力:一つの問題に対して多角的にアプローチし、効果的な解決策を提案できる創造力
    (例)お客様の食物アレルギーに対応するために、特別メニューを考案する

5.体力と持久力

長時間の立ち仕事や重い荷物の運搬など、体力が求められる場面が多いため、持久力が必要です。

  • 体力維持:日頃からの運動や健康管理で体力を維持する
    (例)重い荷物を運ぶ必要があるときや、繁忙期に長時間働く場面
  • ストレス管理:体力だけでなく、精神的なストレスに対処する力
    (例)繁忙期の忙しい時期やクレームに対処する場面

6.チームワーク

旅館の運営はチームで行われるため、他のスタッフとの協力が不可欠です。

  • 協調性:スタッフ間での協力体制を築き、円滑に業務を進めるための協調性
    (例)大規模なイベントや宴会の準備を全員で協力して進める場面。
  • リーダーシップ:経験を積むことでリーダーシップを発揮し、チームを引っ張る役割を担う
    (例)新人スタッフが多い時期に、トレーニングを行い、チーム全体をまとめる場面

旅館業界の最近の動向

昨今の旅館業界がどのように変化してきたのかについて解説します。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの流行により、旅館業界は大きな影響を受け、急激な売り上げ減少に直面しました。総務省のサービス産業動向調査によると、2020年旅館を含む宿泊施設の収益は前年比で約60%減少し、特に大都市や観光地では宿泊率が急激に低下しました。緊急事態宣言や行動制限による旅行の制限が影響し、多くの施設が閉鎖を余儀なくされました。衛生対策やソーシャルディスタンスの必要性から様々なサービスの提供方法に変化が生じ、お客様、スタッフ双方に大きく負担をかける結果となりました。しかし、非接触のサービスが注目され、オンライン予約やコンタクトレス決済、セルフサービスが普及しました。

インバウンド客の増加

コロナ禍による行動制限後、インバウンド客が急激に増加しています。日本政府観光局によると、2023年の訪日観光客数は2500万人で、コロナ前の2019年の8割となり、今年度は過去最多となる見込みです。急激なインバウンド客の増加によって旅館業界は需要が供給を上回っており、旅館の新規開業や増設など、需要に追いつくために四苦八苦しています。しかし、旅館業界は慢性的な人手不足となっており、機械導入によるチェックインの無人化や管理職の現場投入などで対応しているのが現状です。

進むデジタル化

これまで旅館業界では、電話やメールで予約を受け付ける旅館が多く、これらの対応に当たるスタッフの確保や予約手続きの複雑さなど、デジタル化によって減らすことができる業務が多く存在していました。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)のよって業務のデジタル化や手続きの簡素化、人工知能を用いた業務の最適化によって業務の効率化と省力化が行われてきました。この改革によりコロナ禍以降は旅館業界で働くストレスが軽減されつつあります。その一方で、基本的なパソコン操作が出来なければ仕事をすることが難しくなったため、働く側がデジタルに慣れる必要が出てきています。

変化し続けるニーズ

旅館業界は社会や市況の変化に大きく影響を受ける業界です。ホテルに求められるニーズはコロナ前、コロナ禍、コロナ後で大きく変化しました。コロナ以前は、とにかくたくさんの方に宿泊していただくといったように、高い回転率を求められていたのが、コロナ禍で人同士の接触の少ないプライベートな空間、コロナ禍が明けた最近では空間や体験などの独自の付加価値が求められ、旅館業界のトレンドも変化してきました。

経営面では、コロナ後に堅調な回復を見せているホテルが多いことや、宿泊以外のサービスで業績を伸ばすことで経営の安定化を図ってきたホテルも多くあり、時代の流れに合わせて事業や方針を柔軟に変えてくことが求められています。

旅館業界への就職活動のポイント 6選

旅館業界での就職を成功させるためには、準備と戦略が大切です。やっておいたほうが良い就職活動のポイントを6つ紹介します。

1. 企業研究を徹底する

志望する旅館の特徴や理念を深く理解することは、面接でのアピールに繋がります。公式ウェブサイトやSNS、口コミサイトなどを活用して、以下の点を調べましょう。

  • 歴史と理念:創業の背景や企業の使命を理解することで、自分の価値観と一致しているか確認します。
  • サービス内容:提供している宿泊プランや特色あるサービスを把握し、自分がどのように貢献できるか考えます。
  • ターゲットと評判:主なターゲットや旅館の評判を知り、サービス向上のためにどのような工夫ができるかを考えます。

2. インターンシップやアルバイト経験を積む

実際の業務を体験することで、業界理解を深めるとともに、自分の適性を確認できます。以下のポイントに注意して経験を積みましょう。

  • 多様な職種を経験:フロント業務、客室案内、清掃、調理など、様々な職種を経験することで、自分に合った仕事を見つけやすくなります。
  • 長期のインターンシップ:可能であれば、短期間よりも長期間のインターンシップに参加し、深い業務理解とスキルの向上を図ります。
  • 積極的な姿勢:アルバイトやインターンシップの際には、積極的に質問や提案を行い、自分の意欲をアピールしましょう。

3. 資格取得でスキルを証明する

旅館業界で有利になる資格を取得することで、自分のスキルと専門知識を証明できます。以下の資格がおすすめです。

  • サービス接遇検定:接客スキルを磨くための資格で、基本的なマナーを習得できる。
  • ホテルビジネス実務検定:ホテル業務全般の知識を身につけることができ、特にマネジメントや経営に興味がある人に適する。ホテルと旅館は法的な区分がなく、事業形態も似ており、旅館就職時にも大いにアピールできる。
  • 外国語能力検定:外国人観光客が増加しているため、英語やその他の外国語スキルを持つことは大きなアドバンテージとなる。

4. 自己分析を行う

自分の強みや弱み、興味や価値観を把握することで、適切な職種選びができます。自己分析を行うための具体的な方法を紹介します。

  • SWOT分析:自分の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理する。
  • 過去の経験を振り返る:これまでの経験を棚卸しし、成功体験や課題を通じて自分の特性を見つける。
  • フィードバックを活用:友人や家族、元同僚などからのフィードバックを参考に、自分では気づかない強みや改善点を把握する。

5. 面接対策を徹底する

面接での成功は、事前準備と練習がとても大切です。以下の点を重視して対策を行いましょう。

  • 模擬面接を行う:実際の面接を想定した模擬面接を行い、質問に対する適切な回答や姿勢を練習する。
  • 具体的なエピソードを準備:自分の経験を具体的なエピソードとして話せるように準備し、説得力を持たせる。
  • 企業ごとの対策:志望する企業ごとに異なる質問が予想されるため、企業研究を基にしたオリジナルの対策を立てる。

6. ネットワーキング(異業種同士の交流イベント)を活用する

業界内でのネットワーキングは、就職活動において非常に有効です。以下の方法で人脈を広げましょう。

  • 業界イベントやセミナーに参加:旅館業界のイベントやセミナーに参加し、業界の最新情報を得るとともに、関係者と直接交流する。
  • SNSを活用:FacebookやTwitterなどのSNSを活用して、業界のプロフェッショナルとつながる。
  • OB・OG訪問:同じ大学や専門学校の卒業生で、現在旅館業界で働いている人にアプローチし、業界のリアルな情報を聞く

まとめ

旅館業界での就職活動は、準備と努力次第で内定を掴むことができます。企業研究やインターンシップ、資格取得、自己分析、面接対策、ネットワーキングなど、しっかりとした計画を立てて実行することで、あなたのキャリアを築く道が開けます。ぜひ、この記事を参考にして、自分に合った職種を見つけ、旅館業界での成功を目指しましょう!