稼働率 (OCC)、RevPAR、ADRとは?ホテル業界の基本指標を紹介!

ホテル経営において重要な指標である稼働率 (OCC)、販売可能客室収益 (RevPAR)、客室平均単価 (ADR) について、その定義や重要性、具体的な活用方法について解説します。

記事の目的
ホテル業界で超重要な3つの指標を知る

1. 客室稼働率 (OCC) とは?

客室稼働率 (OCC) は、ホテルの客室がどれだけ利用されているかを示す指標です。英語ではOccupancy rateと言い、OCCと表記されます。次のように計算されます。

OCC(%) =(販売された客室数/総客室数)× 100

例えば、総客室数が100室で、そのうち80室が販売された場合、OCCは80%となります。OCCが高いほど、ホテルの客室が有効に利用されていることを意味し、収益の向上に直結します。最も指標が良いとされる東京では2023年度85〜90%1)で推移しています。

注1) https://www.neomount.co.jp/hotel/

OCCの重要性

OCCは、ホテル経営において以下のような重要な役割を果たします:

収益最大化

高い稼働率は、収益の最大化に直結します。空室を減らすことで、ホテルの売上を最大限に引き出すことができます。

コスト効率の向上

一定の固定費用がかかるホテル経営では、客室が多く利用されるほど、一室あたりのコストが低減し、利益率が向上します。

競争力の強化

高い稼働率を維持することは、競合他社に対する優位性を保つために重要です。

2. 客室平均単価 (ADR) とは?

客室平均単価 (ADR) は、販売された客室の平均単価を示す指標です。英語ではAverage Daily Rateと言い、ADRと表記されます。次のように計算されます:

ADR = 客室収益/販売された客室数

例えば、客室収益が10万円で、50室が販売された場合、ADRは100,000÷50=2,000円となります。ADRは、客室の価格設定と収益性を評価するための重要な指標です。東京では2023年度に前年の倍近い15,000円前後1)となっています。

注1) https://www.neomount.co.jp/hotel/

ADRの重要性

ADRは、以下の点で重要です。

収益性の評価

ADRは、販売された客室の価格設定が適切かどうかを評価するための指標です。ADRが高い場合は、収益性の高い価格設定であることを示します。

価格戦略の見直し

ADRを分析することで、価格戦略の見直しが可能となります。適切な価格設定を行うことで、収益性を最大化することができます。

マーケットポジショニング

ADRは、ホテルの市場ポジショニングを示す指標としても重要です。高価格帯のホテルであれば、ADRも高くなる傾向があります。

3. 販売可能客室収益 (RevPAR) とは?

販売可能客室収益 (RevPAR) は、ホテルの全ての販売可能な客室から得られる収益を示す指標です。英語ではRevenue Per Available Roomと書き、RwvPARと表記されます。次のように計算されます:

RevPAR = ADR × OCC
あるいは、

RevPAR = 客室収益 × 販売可能な客室比率

RevPARは、ホテルの全体的な収益力を評価するための重要な指標であり、OCCとADRの両方の要素を組み合わせた指標です。

RevPARの重要性

RevPARは、以下の点で重要です:

総収益力の評価

RevPARは、ホテルの全体的な収益力を評価するための指標として非常に有用です。高いRevPARは、高い稼働率と高い客室単価の両方を示します。

戦略的な価格設定

RevPARを分析することで、価格戦略やプロモーション戦略の効果を評価し、改善することができます。

競合比較

RevPARは、競合ホテルとの比較においても有用です。同じ市場における他のホテルと比較して、自ホテルのパフォーマンスを評価することができます。


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4. 客室稼働率、RevPAR、ADRの相互関係

これらの指標は、相互に関連しており、ホテルの経営戦略において重要な役割を果たします。例えば、稼働率が高くても、ADRが低ければ収益は最大化されません。逆に、ADRが高くても、稼働率が低ければ収益は上がりません。そのため、これらの指標をバランスよく管理することが重要です。

戦略的な管理方法

動的価格設定 (Dynamic Pricing)

需要に応じて価格を柔軟に変更することで、稼働率とADRを最適化します。例えば、ピーク時には価格を上げ、オフシーズンには価格を下げることで、稼働率と収益を最大化します。

プロモーションと割引

特定の時期にプロモーションや割引を行うことで、稼働率を向上させることができます。ただし、割引がADRに与える影響を考慮し、収益が最大化されるような戦略を立てることが重要です。

パッケージプランの提供

宿泊と食事やアクティビティを組み合わせたパッケージプランを提供することで、付加価値を提供し、ADRを向上させることができます。

5. 指標を使った戦略検討の事例

ここまで紹介した指標の結果を形成戦略に取り入れた事例を3つ紹介します。

地域特性を考慮したOCCの向上策

地域特性を考慮することで、稼働率を効果的に向上させることができます。例えば、観光地にあるホテルでは、観光シーズンに合わせたプロモーションを行うことで、稼働率を最大化できます。一方、ビジネス街にあるホテルでは、平日のビジネス需要をターゲットにした価格設定やプロモーションを行うことで、稼働率を最大化できます。ホテルがある地域やターゲットによって適切な施策を打つことで基本指標を改善することができます。

観光地のホテルのケーススタディ

ある観光地にあるリゾートホテルは、年間を通じて高い稼働率を維持するために、地域のイベントやフェスティバルに合わせた特別プランを提供しました。夏季には家族向けのプールパッケージ、冬季にはスキーリゾートパッケージを提供することで、季節ごとの需要に対応しました。また、地域の観光協会と協力し、観光地の魅力をアピールするキャンペーンを実施しました。

ビジネス街のホテルのケーススタディ

ビジネス街に位置するシティホテルは、平日のビジネス需要に対応するために、企業向けの長期滞在プランや会議パッケージを提供しました。また、週末には割引を適用し、観光やレジャー目的のゲストを引きつけることで、稼働率のバランスを保ちました。この戦略により、週末の空室率を低下させ、収益を最大化しました。

6. 指標を改善するために重要なこと

ホテル経営において、稼働率 (OCC)、販売可能客室収益 (RevPAR)、客室平均単価 (ADR) の継続的な分析と改善は非常に重要です。市場の変動や競合他社の動向に応じて、戦略を柔軟に見直すことで、持続的な成長を実現できます。

データ分析ツールの活用

現代のホテル経営では、データ分析ツールを活用することで、これらの指標を効率的に管理することが可能です。例えば、ホテル管理ソフトウェアやビジネスインテリジェンスツール(会社の様々なデータを瞬時に集計・解析するソフト)を導入することで、リアルタイムのデータを基にした迅速な意思決定が可能となります。これにより、収益管理や価格設定の戦略を最適化し、競争力を強化することができます。

フィードバックの収集と対応

また、ゲストからのフィードバックを収集し、それに基づいた改善を行うことも重要です。オンラインレビューやアンケートを通じてゲストの声を聞き、サービスの質を向上させることで、顧客満足度を高め、リピート率の向上につなげることができます。

7. 指標を改善するための具体的な方法

ここまで説明したことを踏まえ、実際にどのような方法で指標を上げるのかについて説明します。

定期的な価格設定の見直し

需要と供給に応じた価格設定を行うために、定期的に価格設定を見直しましょう。市場のトレンドや競合他社の動向を監視し、それに基づいて価格を調整することで、稼働率と収益を最適化します。

効果的なマーケティング戦略の実施

デジタルマーケティングやソーシャルメディアを活用し、ホテルの魅力を効果的に伝えましょう。特に、ターゲットとする市場に合わせたプロモーションキャンペーンを展開し、潜在顧客に選んでもらえるようにすることが重要です。

顧客関係管理 (CRM) の強化

顧客データを活用し、個々のゲストのニーズに応じたサービスを提供することで、顧客満足度を向上させましょう。リピーターを増やすためのロイヤルティプログラム(ポイント制度)や顧客の傾向をもとにした新たなサービスの導入などが有効です。

8. 指標改善の成功事例

実際に指標が改善された有名な成功事例を2つ紹介します。

成功事例1:動的価格(ダイナミックプライシング)設定の導入

ある高級ホテルは、動的価格設定を導入することで、稼働率とADRの両方を向上させることに成功しました。需要が高まる週末やイベント期間中に価格を引き上げ、平日の稼働率が低い時期には割引を適用することで、年間を通じて高い稼働率と収益を維持しました。現在では多くのホテルで導入されている制度です。

成功事例2:プロモーション戦略の効果

別のリゾートホテルは、オフシーズンにワーケーションプランなどの特別なプロモーションを行うことで、稼働率を大幅に向上させました。家族向けのパッケージプランや長期滞在割引を提供することで、平常時の稼働率を維持し、ADRにもプラスの影響を与えました。

9. まとめ

稼働率 (OCC)、販売可能客室収益 (RevPAR)、客室平均単価 (ADR) は、ホテル経営において欠かせない指標です。これらの指標を理解し、効果的に管理することで、ホテルの収益性を最大化することができます。地域特性を考慮した戦略やデータ分析ツールの活用、継続的な改善の努力を怠らず、競争力のあるホテル経営を目指しましょう。

本記事を通じて、これらの指標の重要性と具体的な活用方法について理解を深めていただければ幸いです。成功するホテル経営のために、日々の業務においてこれらの知識を活用し、持続的な成長を実現してください。