旅館の板前はどのような仕事をしているのか分からない方が多いです。そんな方に向けてこの記事では、旅館の板前の仕事内容や魅力、経験とともにどのようなキャリアをたどるのかなどを徹底解説します。
記事の目的
旅館の板前について知る。
1.板前とは
板前とは、日本料理店で調理を担当する料理人のことを指します。特に、寿司店や割烹(かっぽう)、料亭などで働く料理人を指し、カウンター越しに客と接しながら料理を提供するスタイルが特徴です。「板前」という言葉は、調理場の「板場」(いたば)から来ており、そこで調理する人を指します。板場は料理の最終仕上げや盛り付けを行う場所です。板前は、魚を捌く技術や包丁さばき、寿司の握り方などの専門技術を持ち、長年の修行を経て一人前と認められる専門職です。
2.寿司職人との違い
よく同じ意味で捉えられがちな職業に寿司職人があります。寿司職人と板前の違いは、専門領域と仕事内容にあります。寿司職人は寿司を専門に扱い、ネタの仕込みや寿司の握り方、魚の捌き方など寿司を作ることに特化しています。一方、板前は日本料理全般を担当し、寿司だけでなく刺身、天ぷら、煮物、焼き物など多岐にわたる料理を扱います。寿司職人は寿司店、板前は割烹や料亭など広範な日本料理店で活躍することが多いです。
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3.旅館板前の仕事内容
旅館の板前の仕事内容を解説します。
清掃
板前は食品を扱う仕事なので調理場を清潔に保つための清掃は欠かせません。一般的に清掃は終業前に行われ、綺麗な状態で次の日の仕事を始めます。日本料理は生ものを扱うことが多く、厳しい衛生基準を満たすため、徹底した清掃が必要となります。
調理・盛り付け
板前の最大の見せ場となる調理ですが、その大部分は仕込みの時間となります。板前は仕込みから盛り付けまで全てを行い、料理の最終仕上げをカウンター越しで行い、料理をお客様に提供することがほとんどです。一般的に仕込みは若手の板前が担当し、カウンターでの最後の調理業務や仕込みの管理はベテランの板前が行います。カウンターで仕事をする際は料理だけでなく、お客様との会話を通じて特別な食事体験を提供します。
衛生管理
板前にとって、食材の安全性と調理環境の清潔さを確保する事も重要な業務の一つです。調理場の清掃や消毒を徹底し、器具や調理台の衛生状態を常に保ちます。食材は適切な温度で保存します。また、器具や食材が混ざり合うことで菌が繁殖する交差汚染を防ぐため、生食材と調理済み食材の扱いにも注意が必要です。食中毒を防ぐための衛生基準を厳守し、板前としての信頼を築き、安心して食事を提供するため、衛生管理は重要な業務となります。
食材の調達
普段から使う食材のみならず、季節の旬の品や地元の名産品を仕入れてくることも板前の仕事です。専門の業者を通して買い付けることがほとんどですが、特に新鮮な魚を吟味するために毎朝市場に出向く方針をとる旅館や板前も多く存在します。普段の経験や感覚から良い食材を選ぶ能力が求められます。
メニューの考案
いつお店を訪れてもお客様に最高の食事体験を提供できるように、季節やお客様のニーズに合わせたメニューの考案も欠かせません。地元の名産品や旬の食材を活かし、バランスの取れたメニューを作成します。新しい料理やアレンジを取り入れ、常にメニューを進化させることでお客様の満足度をより高いものとします。創造性と経験を活かし、料理の魅力を最大限に引き出すメニュー作りは、板前の重要な役割であり、腕の見せ場でもあります。
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4.板前の魅力
以下のことが旅館板前という職業のやりがいとなるでしょう。
お客様を喜ばせることができる
旅館の板前として働く魅力の一つは、お客様を直接喜ばせることができる点です。美しい盛り付けや季節感あふれる料理を提供することで、お客様に感動や満足感を与えることができます。また、料理を通じて地域の魅力を伝え、思い出に残る食体験を提供することができます。直接お客様の反応を見ることができるため、やりがいを感じやすいのも大きな魅力です。特に旅館では、料亭や割烹に比べ、客層が広いため、様々な人が喜ぶ姿を見られるのも大きな魅力の一つです。
高い調理技術を学ぶことができる
旅館の板前として働くもう一つの魅力は、高い調理技術を学べる点です。旅館では、多岐にわたる日本料理を提供するため、刺身や煮物、焼き物、天ぷらなど、さまざまな調理技術を習得する機会があります。そのため、調理場を管理する板前は多くの経験や知識が求められます。経験豊富な先輩板前から直接指導を受けることで、基本的な技術から高度な技術まで幅広く学ぶことができます。
5.板前の大変さ
板前の仕事は多くの大変さを伴います。長時間労働が多く、早朝の仕込みから深夜の型付けまで行うことが一般的です。また、技術習得には長い修行が必要で、包丁さばきや魚の捌き方など高度な技術が求められます。先輩からの厳しい指導や高い技術要求に応えるため、精神的なプレッシャーも大きいです。また、衛生管理の徹底が必要で、常に厳しい衛生基準を満たすように調理場全体に気を配る必要があります。しかしながら、それらの厳しい環境を乗り越えた分、達成感や成長が得られる仕事です。
6.向いている人の特徴
器用な人
旅館の板前に向いている器用な人は、手先が器用で細かい作業に長けています。包丁さばきや料理の盛り付けなど、精密な技術を要する作業を正確にこなすことができます。また、柔軟性があり、さまざまな料理に対応できる能力も持っています。新しい技術や料理法にも素早く対応し、高いクオリティの料理を提供することができます。
体力がある人
旅館の板前に向いている体力がある人は、長時間労働や肉体的な負荷に耐えることができる人です。早朝から深夜までの仕事や、立ちっぱなしの作業が多い環境でも、疲れを感じにくく、常に元気で仕事に取り組むことができます。また、体力があることで、忙しい時期や特別なイベントにも対応し、料理のクオリティを維持することができます。
創造力がある人
旅館の板前に向いている創造力がある人は、新しい料理やメニューの開発に積極的に取り組みます。季節感や地域の特色を活かした料理を考案し、お客様に驚きと喜びを提供します。食材の組み合わせや料理の見た目、味のバランスに独自のアイデアを加え、料理の魅力を最大限に引き出します。また、創造力がある人は、日々の料理に新しいアプローチを試み、料理人としての成長を遂げることができます。
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7.板前になるには
一人前の板前になるにはまずはお店で修行することになります。板前といってもレベルに応じて任せられる仕事場が異なり、それぞれに特徴的な名称があります。板前の修行で経験する調理の持ち場を順番に紹介します。
1.追いまわし
板前として修業を始めるとまず初めに任される仕事です。決まった持ち場は無く、主に雑用係として各持ち場のサポートを行います。料理をすることがほとんどなく、任された雑用が終わるたびに他の調理場に呼ばれるなど、追いまわされるほど忙しいことから追い回しと名づけられました。主に雑用を担当し、掃除や食器洗い、買い出しといった業務を行います。追い回しの期間で板前としての心構えや厳しい衛生管理を頭に叩き込みます。
2.八寸場
追い回しで食材を扱う前の知識や考えを習得すると晴れて調理業務に携われることになります。まず担当するのは前菜です。前菜は八寸(約24cm)のお盆に入れて提供されていたことから、前菜を担当する板前のことを八寸場と言います。八寸場は調理はしますが、本格的に包丁を扱うことはしません。ここでは先輩の調理を見ながら盛り付けについて学び、前菜の調理方法や食材の色彩感覚を学びます。
3.揚げ場
八寸場を終えると遂に包丁を使った本格的な調理に携わることになります。揚げ場は文字通り、天ぷらや唐揚げなどの調理を担当します。包丁さばきももちろんですが、素材に合った火加減や調理スピードを学び、基礎的な調理技術を一通り学びます。そのため、揚げ場をもって下積みは卒業となります。これ以降は手際よく、高いレベルの料理を作れるように経験を積んでいくステップとなります。
4.焼き場
焼き場は焼き物業務全般を調理する場です。加熱の仕方(ガスや炭火など)や火加減などをコントロールし、料理にきれいな焼き目を付けることで、素材のよさを最大限引き出します。焼き場での修行では、素材に含まれる水分や火加減を学び、日本料理に必要な肉や魚、野菜の焼き方を習得します。
5.蒸し場
蒸し場は蒸し物の調理や味付けを行う場です。味付けをチェックしながら主に煮物、蒸し物、椀物の調理を担当します。特に味付けはお客様からの評価に直結し、お店全体のイメージを決定づけるため、重要かつ慎重に行わなければいけません。そのため、一定の経験を積んだ板前のみが配属されます。ですから、蒸し場は調理場全体の業務進行役を担うことが多く、下積みの指導なども仕事に含まれるので仕事は幅広くなります。味の管理をする板前のため、普段から自分の感覚を落とさないように気を付けている板前も多いのが特徴です。
6.刺し場
刺し場とはお刺身を切ることを意味し、カウンターに立って調理をする板前のことを指します。刺身を切ることはシンプルですが、板前の実力の差が問われる作業です。
さらに、お客様の前で作業することになるため、ミスは許されず、エンターテインメント性が求められます。また、お客様とのコミュニケーションを行ったり、料理の進み具合を把握するなど、調理以外にも気を配ることが多く、マルチタスクが求められる場となります。ここでは料理技術の他にも人間力を求められるポジションであり、立てる板前が限られます。
8.給与
板前全体の平均年収は359万円注1となっており、過去数年間と比べて微増となっています。また、板前見習いの平均年収は356万円注2、一人前の板前の平均年収は479万円注3となっています。しかし、多くの板前は最終的に独立してお店を持ちます。そのため、独立後の収入は店の評判によって大きく上振れることがあるので個人の力量に大きく依ります。また、旅館で働く板前は旅館特有の充実した福利厚生を受けることができ、他の割烹や料亭との大きな違いとなっています。
注1)厚生労働省令和5年度賃金構造基本統計調査
注2)indeedホームページ「板前見習いの給与」2024年6月27日
注3)indeedホームページ「板前の給与」2024年6月27日
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9.まとめ
今回は旅館の板前について紹介しました。一人前の板前を目指して修行をする場合は福利厚生がしっかりしており、高い技術が学べる旅館で修行することがおすすめです。in the HOTELでは板前の求人を扱っています。興味を持たれた方はぜひチェックしてみましょう!