ホテル業界において、効率的な予約管理は非常に重要です。そのため、多くのホテルは、PMSと呼ばれるホテル予約管理システムを導入しています。現在では、機能や特徴の異なる数多くのPMSが存在しており、その違いを理解することが大変です。そこで本記事では、PMSごとの機能や特徴などを比較します。
記事の目的
PMSごとの違いや、特徴を把握する
1.PMSとは?
PMS(Property Management System)は、ホテル業務全般を管理するためのシステムです。予約管理、顧客データ管理、チェックイン・チェックアウトの処理、請求書の発行など、多くの業務を一元化し、効率化を図ることができます。PMSの導入により、手作業によるミスが減少し、スタッフの業務負担も軽減されるため、サービスレベルの向上にも寄与します。
2.PMS選びで考慮すべきポイント
PMSを選ぶときに考慮すべきポイントを以下にまとめました。
ホテルの規模とニーズを考慮する
PMSはホテルの規模やニーズに合わせて選ぶことが重要です。例えば、大人数のオペレーションを円滑に回す管理機能が備わっているPMSがありますが、このような機能が必要なのは大規模なホテルに限られますし、必要最低限の機能にとどめたお手頃なPMSは中小規模向けホテルに限られます。このように、大規模ホテルでは客室数が多くても対応可能なPMS、中小規模のホテルではコストパフォーマンスの高いPMSを選択するようにしましょう。
機能の充実度を確認する
ほとんどのPMSに標準装備されている機能を下の表にまとめました。このほかにもPMSごとに多彩な機能を備えています。そのため、例えば予約管理、顧客データ管理、請求書発行、レポート機能は必要だけど宴会管理機能や複数施設一括管理機能は必要ないからこのPMSにしよう、といった具合で標準装備している機能とニーズを比較してみましょう。確認したうえで、ついている機能と求める機能に過不足がないか確認しましょう。
予約管理 | オンライン予約の一元管理、予約状況のリアルタイム更新 |
チェックイン・チェックアウト管理 | 迅速かつ効率的なチェックイン・チェックアウトプロセス |
顧客情報管理 | 顧客の詳細情報、滞在履歴、特別なリクエストの管理 |
収益管理 | 料金設定、売上管理、収益予測 |
客室管理 | 客室の清掃状況、メンテナンス管理 |
会計管理 | 宿泊料金、追加料金の管理、請求書発行 |
レポート作成機能 | 売上報告書、稼働率報告書の自動作成 |
その他の便利機能 | マーケティングツール、顧客フィードバック管理 |
使いやすさとサポート体制を評価する
PMSはスタッフが日常的に使用するため、使いやすさが重要です。また、導入後のサポート体制も重要なポイントです。トラブルが発生した際に迅速に対応してくれるサポート体制が整っているかを確認しましょう。
他システムとの連携が可能か
PMSは他のシステム(CRM、会計システム、清掃のアサインシステムなど)との互換性があることが望ましいです。そのため、できる限り現在使用している他のシステムと互換性があるPMSを選ぶことで、少ないコストで業務効率化を図ることができます。
3.日本国内向け主流PMSの比較
日本国内では、ホテルの規模やニーズに応じてさまざまなPMSが利用されています。以下に、主要なPMSの特徴、強み、特徴的なオプション機能を紹介します。
- GLOVIA smart ホテル
- INCHARGE 7
- Staysee
- AirHost
- HOTEL SMART
GLOVIA smart ホテル(大規模ホテル向け)
提供元: 富士通Japan株式会社
特徴
- 宿泊予約、フロントレセプション、フロント会計、顧客管理、売掛管理など、ホテル運営に必要な機能をトータルで提供。
- クラウドSaaS型サービスを利用することで、イニシャルコストを抑え、システム運用負担を軽減。
- レベニューマネジメントサービスやデータ提携により、適正価格販売で集客率を向上。
- オプションにサイトコントローラーや自動チェックイン機との連携、清掃管理アプリの追加があり、カスタムの幅が広い
- 自動チェックインや清掃管理業務をシステム化し、業務効率化を実現。
- 全国1,000施設以上の導入実績 (Fujitsu) (Fujitsu) (Check Inn 株式会社)。
INCHARGE 7(大規模ホテル向け)
提供元: JTB提供
特徴:
- クラウド型PMSで、宿泊予約、フロント会計、顧客管理機能を提供。
- グループ施設の管理に強く、複数施設の統合管理が可能。
- 24時間365日のサポートを提供し、大規模施設から中小規模施設まで幅広く対応 (Fujitsu)。
Staysee(中小規模ホテル向け)
提供元: 株式会社エクシオジャパン
特徴:
- ホテルから民泊に至る多様な規模の宿泊施設に対応するクラウド型PMS。
- 予約管理、客室管理、売上管理などの機能を搭載。
- サイトコントローラー機能が標準装備
- オプションで経費管理ツール、清掃アプリ、クラウド型POSレジとの連携ができる
- 無料トライアルが提供されており、導入前に試用が可能。
- 様々な料金プランがあり、導入の敷居が低い (Fujitsu)。
AirHost(中小規模ホテル向け)
提供元: AirHost株式会社
特徴:
- 宿泊管理機能オールインワン型のクラウドPMSで、非対面チェックインや自動化された収支・清掃管理機能を提供。
- 複数の民泊を一括管理できる機能を持つ。
- Google上に民泊の空室確認、予約ができるオプションが人気
- 予約からセルフチェックインまで一括で行えるアプリを提供。
- 無人ホテル運営に最適で、QRコードやスマートフォンを利用したチェックイン・チェックアウトをサポート (Fujitsu) (観光経済新聞)。
HOTEL SMART(中小規模ホテル向け)
提供元: 株式会社ホテルスマート
特徴:
- 全国1,200以上の施設で導入されているクラウド型PMS。
- 宿泊業界DXに焦点を当て、業務効率化や省人化に加え、売上アップを実現するための機能を多数搭載
- 予約管理、顧客管理、自動部屋割り、モバイルチェックイン対応など、多数の機能を提供。
(Check Inn 株式会社)。
これらのPMSはそれぞれ独自の強みを持ち、ホテルや旅館の運営を効率化し、顧客サービスの向上に寄与します。詳細は各提供元の公式サイトをご参照ください。
名前 | 規模 | 強み | 主なオプション |
GLOVIA smart ホテル | 大規模 | ・婚礼・宴会部門の機能も充実・基幹的なシステムを標準装備 | ・サイトコントローラー連携・自動チェックイン連携・清掃管理システム・婚礼、宴会管理システム |
INCHARGE 7 | 大規模(特に旅館) | ・グループ施設の管理に強い・宴会場やエステ、カラオケルームなどの施設管理が可能 | ・各種施設管理・直感的に操作できるアサイン機能 |
Staysee | 中小規模 | ・多様な規模の宿泊施設に対応・サイトコントローラー機能が標準装備・多彩な料金プラン | ・経費管理ツール・清掃アプリ・クラウド型POSレジとの連携 |
AirHost | 中小規模(特に民泊) | ・国内外様々な予約サイトと連携可能・セルフチェックイン機能の充実 | ・部屋割り機能・メッセージ機能・GoogleMapとのAPI連携 |
HOTEL SMART | 中小規模 | ・全国1200以上の施設で導入・業務効率化や寮緑化に強み | ・自社公式SNSとの連携・チェックインから鍵の受け渡しまで非対面でできる機能 |
4.国内向けPMS導入事例3選
国内の宿泊施設では、業務効率化や顧客満足度向上のため、PMS(Property Management System)の導入が加速しています。今回は、実際にPMSを導入した宿泊施設の事例を3つ紹介します。宿泊施設ごとに、PMS導入の具体的な導入効果や活用方法をご紹介します。
事例1:【GLOVIA smart ホテル(富士通Japan)】
導入企業: 大規模ホテルチェーン
導入PMS: GLOVIA smart ホテル
導入の背景: 国内外に多数のホテルを展開する同社は、多言語対応やグローバルな予約サイトとの連携強化、そして各ホテルの情報を一元管理できるシステムを求めていました。
導入効果:
- 多言語対応: 多様な国籍の顧客に対応できるよう、多言語化を実現。海外からの予約増加に貢献しました。
- 海外の予約サイトとの連携: 複数の海外予約サイトと連携し、予約チャネルの拡大を実現。
- 一元管理: 複数のホテルの情報を一元管理することで、経営状況を可視化し、効率的な経営を実現しました。
導入のポイント: GLOVIA smart ホテルは、大規模なホテルチェーンでも対応可能な拡張性と、多言語対応が強みです。グローバル展開を視野に入れているホテルに最適なソリューションです。
事例2:【HOTEL SMART】
導入企業: 中小規模ホテル
導入PMS: HOTEL SMART
導入の背景: 人手不足に悩んでいた同社は、チェックイン・アウト作業の自動化や、予約管理の一元化により、業務効率化を図りたいと考えていました。
導入効果:
- チェックイン・アウトの自動化: 自動チェックイン機を導入し、スタッフの負担を軽減。
- 予約管理の一元化: 複数の予約サイトからの予約を一元管理し、ダブルブッキングを防ぎました。
- データ分析: 顧客データを分析し、マーケティングに活用。
導入のポイント: HOTEL SMARTは、中小規模のホテルでも導入しやすい価格帯とシンプルな操作性が特徴です。直感的な操作性で、短期間での習得が可能。
事例3:【RESERVA】民泊運営における収益向上
導入企業: 民泊運営会社
導入PMS: RESERVA
導入の背景: 複数の物件を管理しており、空室率の低下と収益の最大化を目指していました。
導入効果:
- 多物件管理: 複数の物件の予約を一元管理し、効率的な運営を実現。
- 動態分析: 過去の予約データから、最適な料金設定や広告戦略が可能になりました。
- ゲストとのコミュニケーション: ゲストとのコミュニケーションツールとして活用し、リピート率向上に貢献。
導入のポイント: RESERVAは、小規模な施設の収益向上に繋がる分析機能などの民泊運営に特化した機能が充実しています。
参考
GLOVIA smart ホテル 導入事例(公式ページ)
ホテルスマート導入事例(公式ページ)
RESERVA ヘルプセンターのホームページ
上記以外にも、多くの国内向けPMSが、様々な宿泊施設で導入され、その効果を実証しています。PMSの導入は、業務効率化だけでなく、顧客満足度向上や収益向上にもつながる重要な取り組みです。
PMS導入により、ホテル業務の効率化や顧客満足度の向上を目指すことができます。しかし、システムの導入だけでなく、それを活用するための優秀なスタッフも必要です。現在、私たち「in the HOTEL」の求人ページでは、PMSの知識を活かせるホテル業界の求人情報を多数掲載しています。新たなキャリアを築きたい方は、ぜひ一度ご覧ください。
5.最新のPMS情報
PMS(Property Management System)は日々進化しており、最新のトレンドや技術を取り入れることで、ホテル運営の効率化と顧客満足度の向上が図れます。ここでは、最新のPMS情報について詳しく解説します。
クラウドベースのPMS
クラウドベースのPMSは、データがインターネット上のクラウドに保存され、場所を問わずアクセス可能です。これにより、ホテルの管理者はオフィス以外の場所でも業務を行うことができます。また、クラウドベースのシステムは、初期導入コストが低く、システムの更新や保守が簡単です。自動的にデータのバックアップが行われるため、データの紛失リスクも軽減されます。
モバイル対応のPMS
スマートフォンやタブレットからも操作可能なPMSが増えており、スタッフの業務効率が向上しています。特に、客室の清掃状況やメンテナンス依頼をリアルタイムで確認できる点が評価されています。フロント業務や顧客対応の迅速化にも寄与し、顧客満足度の向上に繋がります。
AIと機械学習の導入
AI(人工知能)と機械学習の技術を取り入れたPMSは、需要予測やダイナミックプライシングの最適化を行います。これにより、収益の最大化が可能となります。例えば、過去のデータを基にして需要を予測し、ピークシーズンやオフシーズンに合わせて料金設定を調整することで、ホテルの稼働率と収益を向上させます。
様々なシステムとの連携強化
PMSは他の業務システム(会計システム、マーケティングツール、CRMなど)と連携することで、さらなる効率化が図れます。最新のPMSは、これらの周辺システムとの連携強化が容易に行えるよう設計されています。これにより、データの一元管理が可能となり、部門間の連携がスムーズになります。
顧客の利便性向上
最新のPMSは、顧客の利便性を向上させるための機能を多数搭載しています。例えば、事前チェックインやモバイルキーの利用、個別の顧客対応を可能にする顧客情報管理機能などが挙げられます。これにより、顧客一人ひとりに合わせたサービス提供が可能となり、顧客満足度の向上に繋がります。
最新のPMSを導入することで、ホテル運営の効率化と顧客満足度の向上が実現できます。進化する技術を取り入れ、常に最新の情報を取り入れることが、競争力のあるホテル運営の鍵となります。
6.まとめ
PMS(Property Management System)は、ホテル運営の効率化と顧客満足度向上に不可欠なシステムです。本記事では、PMSの基本機能から最新の導入事例、最新トレンドについて解説しました。
日本国内では、さまざまなPMSが利用されており、価格や機能、サポート体制、導入実績に基づいて選定することが重要です。また、ホテルの管理システムと同程度重要なのが、ホテル業界でのスタッフ採用です。優秀な人材が揃うことで、システムの導入効果が最大化され、ホテル運営の成功につながります。
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