ホテルで働いていると、「退職金はもらえるのか」「もらえるとしたらいくらくらいなのか」が気になる方も多いのではないでしょうか。給与が低いと言われるホテル業界だからこそ、退職金の有無はキャリアを考えるうえで見落とせない条件です。
実は、ホテルを含む宿泊業・飲食サービス業の退職金制度の導入率は全業種平均を大きく下回っており、退職金がそもそもない職場も少なくありません。転職や退職を考えるタイミングで慌てないよう、事前に相場と仕組みを把握しておくことが大切です。
この記事では、ホテルの退職金相場を勤続年数別に整理し、制度の種類や注意点まで解説します。
ホテルに退職金制度はあるのか
退職金制度は法律で義務づけられているものではなく、導入するかどうかは企業が任意で決めます。そのため、同じホテル業界でも退職金がある職場とない職場が混在しているのが現状です。
宿泊業の退職金導入率は低い
東京都産業労働局が実施した「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」によると、飲食店業および宿泊業の退職金制度の導入率は34.7%でした。産業全体の導入率が71.5%であることと比べると、宿泊業の導入率はかなり低い水準と言えます。
以下は、業種別の退職金制度導入率を比較したものです。
| 業種 | 退職金制度の導入率 |
|---|---|
| 産業全体(平均) | 71.5% |
| 情報通信業 | 約80%台 |
| 製造業 | 約70%台 |
| 飲食店業・宿泊業 | 34.7% |
つまり、ホテルで働いていても約3人に2人は退職金制度のない職場に勤めている計算になります。まずは自分が勤める職場の就業規則を確認することが先決です。
大手と中小で状況は大きく異なる
大手ホテルチェーンや老舗高級ホテルでは、正社員を対象とした退職金制度が整備されているケースが多い傾向にあります。一方で、中小規模のホテルや旅館では制度そのものが未整備、または一部の役職者のみが対象となっているケースが目立ちます。
また、雇用形態によっても違いがあります。正社員には退職金があっても、契約社員やパートには適用されないという職場も多く、入社前に確認しておくべき重要な条件のひとつです。
ホテルの退職金相場はいくら
退職金の金額は、勤続年数・退職理由・企業規模・役職などによって大きく変わります。ここでは、中小規模の宿泊業を中心に、目安となる金額を紹介します。
勤続年数別のモデル退職金
東京都産業労働局の資料(2020年時点)をもとにした、中小規模の宿泊業・飲食業における高卒者のモデル退職金の目安は以下の通りです。あくまで参考値として捉えてください。
| 勤続年数 | 自己都合退職の目安 | 会社都合退職の目安 |
|---|---|---|
| 3年 | 約15〜30万円 | 約20〜40万円 |
| 5年 | 約30〜60万円 | 約40〜80万円 |
| 10年 | 約80〜150万円 | 約100〜180万円 |
| 20年 | 約200〜350万円 | 約250〜400万円 |
| 定年(35〜40年) | 約500〜800万円 | 約600〜900万円 |
他業種の大企業では定年退職時に1,900万〜2,300万円程度が相場とされており、宿泊業の退職金水準はそれと比べるとかなり低めです。ただし、大手チェーンや外資系ホテルではこれより高い水準になることもあります。
退職金をもらうための最低勤続年数
退職金を受け取るには、一定の勤続年数を満たす必要があります。宿泊業・飲食業では、自己都合退職の場合に「勤続3年以上」を要件とする企業が半数を占めています。
退職金の受給要件として押さえておくべきポイントをチェックリストで確認しておきましょう。
- 勤続年数が3年以上あるか(自己都合退職の場合)
- 正社員として在籍しているか(契約社員・パートは対象外の場合が多い)
- 退職理由が自己都合か会社都合かを確認する
- 就業規則に退職金規程が明記されているか確認する
- 退職金の支払い時期・方法を事前に確認する
「長く働いているから退職金がもらえる」と思い込まず、必ず就業規則で条件を確認しておくことが大切です。
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退職金制度の種類と違い
退職金の受け取り方には、大きく2つの制度があります。どちらの制度が適用されるかによって、受け取り方や税金の扱いが変わってくるため、あらかじめ理解しておきましょう。
退職一時金制度
企業が退職金を管理・積み立てし、退職時に一括で支給する仕組みです。金額のインパクトが大きい反面、企業の業績不振や倒産の際に支給額が減少したり、支払われなかったりするリスクもあります。中小ホテルで採用されているケースが多い制度です。
企業年金(退職年金)制度
定年退職後に毎月一定額を受け取れる制度です。生活設計が立てやすいというメリットがありますが、一定の勤続年数・年齢要件を満たさないと受け取れないケースもあります。条件外の場合は退職一時金として支払われることが多いです。
以下は2つの制度の主な違いです。
| 比較項目 | 退職一時金制度 | 企業年金制度 |
|---|---|---|
| 受け取り方 | 退職時に一括支給 | 退職後に毎月分割支給 |
| メリット | まとまったお金が一度に入る | 老後の安定収入になる |
| リスク | 企業倒産時に支給されない可能性 | 受給条件を満たさないと一時金扱いに |
| 税金 | 退職所得控除が適用される | 雑所得として毎年課税対象 |
どちらの制度が適用されているかは職場によって異なります。転職・就職の際は求人票や面接で確認しておくと安心です。
退職金を受け取る際の注意点
退職金は受け取り方によって、税金や手取り額が変わることがあります。事前に把握しておくことで、損をせずに受け取れる可能性があります。
退職所得控除を理解しておく
退職金を一時金として受け取る場合、退職所得控除が適用されます。勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除されます。
たとえば、勤続10年の場合の控除額は400万円となります。退職金がそれ以下であれば、税金はかからない計算です。長く働くほど控除額が増えるため、勤続年数はそのまま手取り額にも影響します。
自己都合と会社都合で金額が変わる
同じ勤続年数でも、退職の理由によって退職金の金額は変わります。会社都合退職(リストラ・早期希望退職など)は自己都合退職より高く設定されていることが多く、差額が数十万円になるケースもあります。
退職を考える際は、退職理由の違いが退職金にどう影響するかを確認してから動くのが賢明です。
退職金が少ない場合の考え方
ホテル業界では退職金が少ない、またはそもそも制度がないという現実があります。それを踏まえたうえで、長期的なキャリアをどう考えるかが重要です。
転職でキャリアアップを狙う
退職金が充実している大手ホテルや外資系ホテルへのキャリアアップ転職は、待遇改善の有効な手段のひとつです。同業界内でも、企業規模や経営母体によって退職金の水準は大きく変わります。
中退共(中小企業退職金共済)に加入している企業に転職した場合、退職金を引き継げるケースもあるため、転職先の退職金制度がどの仕組みを採用しているかも確認する価値があります。
自分で老後に備える選択肢も
退職金制度がない、または少ない職場に勤めている場合は、iDeCoや積立NISAなど、自分で老後資金を準備する手段を活用することも選択肢のひとつです。退職金に頼りすぎず、個人での資産形成を早い段階から意識しておくことが将来の安心につながります。
よくある質問
ホテルに退職金がない場合、何か対策はありますか?
退職金制度がない職場に勤めている場合は、iDeCoや積立NISAなどを活用して自分で老後資金を積み立てる方法があります。また、中小企業退職金共済(中退共)に加入している転職先を選ぶことで、将来的に退職金を受け取れる環境に移ることも選択肢です。
退職金は勤続何年から受け取れますか?
宿泊業では自己都合退職の場合、勤続3年以上を受給要件とする企業が半数程度を占めています。ただし、要件は企業ごとに異なるため、就業規則で確認することが大切です。勤続年数が短いほど受け取れない可能性が高くなります。
外資系ホテルの退職金はどうなりますか?
外資系ホテルでは、日本の退職一時金制度ではなく、企業型確定拠出年金(DC)を採用しているケースがあります。退職金の仕組みが国内ホテルと異なる場合があるため、入社前に制度内容をしっかり確認しておくことをおすすめします。
転職しても退職金は引き継げますか?
転職前後の企業がどちらも中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合、退職金を引き継ぐことが可能です。転職先が同じ制度を採用しているか確認しておくと、将来の受け取り額に差が出にくくなります。
まとめ
ホテルの退職金は、宿泊業の制度導入率が34.7%と低く、そもそも退職金がない職場も多い状況です。制度があっても勤続年数・退職理由・企業規模によって金額は大きく変わり、定年まで勤めても他業種の大企業と比べると低めの水準になりやすい傾向があります。
退職金に過度な期待を持たず、就業規則で制度の有無と条件を確認したうえで、必要に応じて自分で老後の備えを考えることが、ホテル業界で長く働くうえで重要です。転職を考えている方は、退職金制度の充実した職場を選ぶ視点もキャリア選択のひとつに加えてみてください。
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